2008年12月3日水曜日

Googleで論文が書けるか?

Googleに入って論文が書けるか? 中の人が答えています。

A common question I get is "How hard is it to publish at Google?" I want to dispel the myth that it is hard. It is easy to publish, easy to put code into open source, easy to give talks, etc. But it is also easy for great research to become great engineering, and that is an incredible lure. (よく受ける質問が、「Googleで論文を書くのは難しい?」というもの。実際難しくはないし、コードをオープンソースにしたり、発表したりするのも問題ない。それに、いい研究をいい製品にもしやすい。それがGoogleの魅力だ。)
察するに、論文を書くことができるか?という文字通りの意味ではYes。でも、論文を書くためのincentive(きっかけ、強い動機)が生まれるか、インパクトのある論文を書けるようになるか、という点では、ちょっとわからない。ここで解答している人も、Googleに入ってから筆頭著者(first author)で論文を書いているわけではないし、Papers written by Googlers に紹介されている論文も、僕が知っている分野に関しては、Googler(グーグルの社員)単独のものではなく、もとから論文を書ける力のある人がGoogleの中の人と共著になっていたりする。あるいは、論文を書いてからGooglerになった、という傾向。

同じようなコメントが日本のGooglerからも欲しいものです。少なくともPapers written by Googlersの日本版が。というのも、大学関係の人の間では、論文を書く力がつく前の人材(学部・修士課程を終えたばかり)が、プログラミングができるという理由で、日本のGoogleに青田買いされている現状を非常に懸念しています。「論文を書ける」人材が本当に欲しい場合、僕が人事担当なら、PhDを持った学生、あるいは自力でそこそこの論文誌・学会に採録される論文を書いた経験のある人しか採用しません。

大学のように入ってから中で鍛えるのならそれで良いですが、鍛える力を持った人、論文を書くことに強い意識を持った人が中にいないのなら絶望的です。青田買いされた人材が、論文に関しては青田のまま終わってしまいます。Google以外の会社や大学の研究室でも同じことが言えて、研究志向を持っていない(過去にあまり論文を書いていない)人が上司になるだけで、論文を書くことは相当難しくなると思います。

論文が自身のキャリアにおいて大事なら、「書ける」かどうかだけではなく、「書くために必要な要素(論文へのincentive、経験を持った師匠となるべき人)」が揃っているかどうかも、ぜひ確認しておきたいところです。

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